CKDが悪化すると、末期腎不全に移行するのと並行して高リン血症があらわれます。高リン血症は腎機能が低下することによりリンが排泄できなくなり体内に溜まる病態のことであり、この異常はステージG3より始まるといわれています。自分のCKDステージを再度確認し、早期発見・早期治療のために、血清リンを測定するよう心がけましょう。
高リン血症とは?
腎臓の機能が低下すると、リンの排泄ができなくなり、徐々に体内に溜まって高リン血症となります。
高リン血症はそれ自体自覚症状はありませんが、高リン状態が続くことにより、骨がもろくなったり、骨ではないところに石灰化を起こして心筋梗塞や脳卒中といった深刻な事態につながります。CKDの患者さんは日頃から血清リンの値に注意を払い、異常が出たらすぐに食事療法やリン吸着薬の服用により、リンの値を基準値内にコントロールすることが大切になります。
日本透析医学会:慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン, 透析会誌45(4): 301-356, 2012
高リン血症管理

リンとは?
リンはヒトの十大元素の1つで、生体内で6番目に多い元素といわれており、体重の約1%、700~800g存在します。リンの働きとしては、エネルギーの運搬を行ったり、細胞膜の構成成分となったりします。また、カルシウムとともに骨の主要な成分となり、骨を強く硬くしています。
高リン血症の原因は?
食物摂取により体内に入ったリンは、一部が腸で吸収され、残りは便と一緒に体外に排泄されます。健康な人の場合、吸収されたリンと同量のリンが腎臓から尿へ排泄されるので、体内にリンが溜まることはありません。ところが、腎臓の機能が低下すると、吸収したリンを尿へ排泄することができず、体内に溜まって高リン血症となります。


腎臓の機能が低下すると・・・

1. 異所性石灰化とは?
2. 二次性副甲状腺機能亢進症とは?
高リン血症の治療
高リン血症は食事療法と薬の服用によって予防・治療することができます。
高リン血症はすぐに変化が起こらず、長い月日をかけて体を蝕んでいくのが特徴です。
検査で異常が指摘されたら、医師と相談して早急にコントロールに取り組みましょう。.

食事療法ではリンを多く含む食品の摂取が制限されます。リンは蛋白質が豊富な食品に含まれていることが多く、蛋白質制限をすると同時にリンの過剰摂取は防げます。特に乳製品・小魚等にリンが多いため注意が必要です。しかし、蛋白質は体に不可欠な栄養素でもあるため、過度に制限しすぎることなく、良質な蛋白質を効率よく摂取することが必要となります。また、加工食品やインスタント食品には、食品添加物としてリン酸塩が多く使用されているので優先的に避けるようにしましょう。
リンを多く含む食品の摂取を制限し、血清リンの数値をコントロールしましょう!
リンが多く含まれる食品


高リン血症における薬物治療
食事療法でリン濃度をコントロールできない場合は、リンの吸収を抑えるリン吸着薬の服用が必要となります。