腎臓は1個約150gと比較的小さな臓器です。それにもかかわらず、心臓から送り出される血液の約4分の1もの量が流れ込んでおり、生命活動や健康維持においてたいへん重要な役割を果たしています。
腎臓の機能が低下するとさまざまな不調や病気を引き起こしますが、腎臓はいわゆる「沈黙の臓器」で、かなり悪化しないと自覚症状として現れません。
いつまでも健康な生活を送るためには、まずは腎臓の持つ役割の重要性を認識してください。
その上で積極的に検査を受け、早期に対策を講じることが大切です。
腎臓の機能が低下すると
• 夜中に何度もトイレに行く(夜間頻尿)
• 手足がむくむ
• 貧血や立ちくらみが起こる
• 疲れやすく常にだるい
• 息がきれやすい
このような自覚症状が現れる頃には、かなり進行している場合が多く放置しておくと、命にかかわる深刻な危機をまねくことに! 定期的に健康診断を受け、尿や血圧の検査をすることが早期発見につながります。
腎臓の位置と構造
腎臓は背中側の腰の少し上あたりに位置しており、左右1つずつあります。形はそら豆のような感じで、重さは約150gくらい。だいたい大人の握りこぶしくらいの大きさです。
腎臓の構造は主に、枝分かれした血管と「ネフロン」※と呼ばれる基本単位から成り立っています。
※ 働き①老廃物の排泄「ネフロンの働き」参照

働き①
老廃物の排泄
人の全身には地球2周半分もの長さにおよぶ血管が張り巡らされています。その中ではめまぐるしいスピードで血液が循環しており、体のすみずみまで酸素や栄養素を運んでいます。また同時に体内で発生した老廃物を回収するため、それらを定期的に体外に排泄することが必要となります。
腎臓にはこのような老廃物を選り分けて尿として排泄し、必要なものは体内に溜めるフィルターのような機能が備わっています。

老廃物の排泄が
できなくなると…
腎臓の機能が低下すると充分に老廃物が排泄されなくなります。体に溜まった老廃物は有毒物質となり、体の不調やさまざまな病気の原因に。もし、尿が排泄できなくなると体内に毒素が充満し、放置しておくと数日から数ヵ月のうちに命を落とすといわれています。
働き②
水・電解質のバランスの維持
人間の体内の水分(体液)量は食事や運動などにより日に日に変化しますが、腎臓は尿の濃さや量を調節することで、体内の水分バランスを一定に保っています。
また、体液に含まれる重要な電解質(ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リンなど)のバランスを保つのも腎臓の役割です。
さらに、腎臓は酸を排泄したり、重炭酸イオンを取り込んだりすることでpHバランスを調節。私たちの体を望ましい弱アルカリ性の状態に保ってくれます。

水・電解質のバランス
が 維持できなくなると…
顔や手足のむくみは腎臓からの危険信号。体内の調整が上手くいかず、余分な水分や塩分が体内に残ってしまうことが原因です。逆に、体内の水分が少なくなると脱水症状を引き起こします。また、pHバランスが崩れて体が酸性に傾くと、体内のさまざまな酵素が上手く働かなくなってしまいます。
働き③
血圧の調節
腎臓は水分と塩分の排泄量を増加したり減少したりすることで血圧を調節しています。
また、腎臓には血圧を調節するホルモンを分泌する働きもあり、二重の意味で血圧と関係の深い臓器なのです。
腎移植を受けた患者さんに高血圧が改善されるケースが多いのは、こういった理由によります。

血圧の調節が
できなくなると…
腎臓の機能が低下すると血圧の調節が上手く働かず、高血圧を引き起こすことがあります。それが引き金となり、心臓発作や脳卒中の危険を招くことも。逆に、高血圧自体が腎臓に負担をかけ、腎臓の機能を低下させるケースもよくみられます。
働き④
骨の成長
骨を強くするためには、腸でカルシウムの吸収率を高め、骨へのカルシウム定着を促してくれる活性型ビタミンDが欠かせません。腎臓はこの活性型ビタミンDの生成にもかかわっています。
ビタミンDは食事の摂取および紫外線を皮膚に浴びることによって体内で合成され、その後肝臓で代謝されて別の物質に変化。さらに腎臓で活性型ビタミンDに変換されます。

強い骨が
作れなくなると…
腎臓の機能が低下するとビタミンDの活性化も低下してしまうため、どんどん骨が弱くなっていきます。これらが加齢による骨量の低下とあいまって、骨粗しょう症の進行を加速させることが少なくありません。
働き⑤
血液を作る
腎臓には骨髄に作用して赤血球を産生する造血ホルモン(エリスロポエチン)を産生する働きがあります。赤血球の主な役割は全身に酸素を運ぶことです。血液中の赤血球が不足し、酸素不足が起こると、腎臓はエリスロポエチンを産生して赤血球の産生を促します。

※貧血には腎臓の機能の低下が原因ではなく、鉄欠乏、感染(炎症)、消化管出血が原因で起こる貧血もあります。
赤血球が充分
産生されなくなると…
腎臓の機能の低下が続くとエリスロポエチンの産生が低下し、赤血球が減少して貧血を引き起こします。めまい、動悸、倦怠感といった症状を引き起こしますが、このような腎臓の機能の低下に起因する貧血は「腎性貧血」と呼ばれています。